Dr Makotyの近況報告2011

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12/16 大分に来てもう30年になります。私の住んでいるところの裏に、霊山という原生林でおおわれた小高い山があります。こいつが家の西側にあるので、冬は昼過ぎから影になって暗くなって寒くてこまってしまうのですが(夏は夕日が山を外れていつまでも西陽があたります)、ここには手付かずの自然が残っているようです。ここに越してきて初めて見た生き物は、オオムラサキ、イシガキチョウ、ミカドアゲハ。こいつらが家の周りを飛んでいるのです。昆虫好きにとっては聖なる蝶たちです。それに両生類ではオオイタサンショウウオ。カスミサンショウウオの亜種だったと思います。イモリ程度の大きさで、薄い茶色をしています。春頃、近所の田んぼの水路に卵塊を産んでいました。それまで一度見たいと思っていた生物にここで遭遇できました。大分市にあるもうひとつの深い森は、サッカー場や高速道路のIC、そしてショッピングセンターと住宅地になってしまってもう見る影もありませんが、霊山の方は、利用者減のため宿泊施設だった自然の家も取り壊され、しばらくは深い原生林が生き残りそうです。そうそうもうひとつ思い出されるのが、25年くらい前、大分川の河川敷で元気に飛び回る青いタテハチョウを見たことです。濃い青にくっきりした小さな赤丸。この前、ブータンシボリアゲハのNHKの映像のなかでちらっと出てきました。あ、これだと思いました。やはりあれはアオタテハモドキだったようです。沖縄にいる種。たしか宮崎では目撃例があった。今だったらシャメ撮れるんだけどなあ。
11/17 今年10月に東京であったレスピロ後援の「神経難病の包括的呼吸ケア」ワークショップで発表させていただいた自動吸引のプレゼンテーションを、少し改変してネットにアップしました。パワーポイントのスライドです。ビデオやアニメは容量の関係で無理でしたので省いています。ご参考にされてください。
11/12 皆さん、と言っても男性限定ですが、りんご自分で剥いて食べてますか?奥さんが剥いてくれたりんごなら食べるけど、わざわざ自分で剥いてまで食べようと思わん、というのが多数派でしょうね。男はだまって丸かじりというマッチョはおられるかもしれません。
どうもあの生のりんご、まずくはないのですが、いまいち食指が進まないというのも私の本音です。そこでお勧めなのが、お手軽コンポートです。りんごのコンポートというと細かく切って砂糖で煮るというイメージありますが、そんな手間はいりません。まず皮むきです。使い慣れない包丁を持つ必要はありません。よく切れるピーラーで剥きましょう。不器用なあなたにもあっというまにりんごが剥けます。それを4分割してヘタと芯を抜いて、さらに分割(つまり8分割)。それを陶器の小椀にいれて平皿で蓋をして、あとは電子レンジ500Wで4分間チンするだけ。砂糖の添加などは必要ありません。適度な甘さと酸っぱさで歯ごたえものこるコンポートの完成です。実はこれ赤ワインに合うんです。ワイン好きはお試しを。
11/7 最近はまっているのが、塩パスタ。これまでパスタはオイル系が好きだったのですが、まあちょっと体重と相談ということであっさり目にしてみようか、てことで。まずパスタを茹でます。アルデンテでは固すぎてあいません。もう少し時間をかけてみます。プラス1分半から2分くらい。最近のパスタは、多少長めに湯がいても、小学校の給食スパみたいに柔らかくなりませんからご安心を。別鍋でグリーンアスパラとむき海老を塩茹でして湯切りしたパスタにあえて、そこに塩を適量振ってよく混ぜたらできあがり。立ち上る小麦の香りとなめらかな喉越し。和食のおかずにもよくあいます。
10/27 アモレも200台を突破し、ダブルサクションも月産500個となっているようです。一度アモレを使われた方は、順調に自動吸引を継続していただいていることをうかがわせるデータです。先日は、県南の佐伯市で、徳永さんにもお出ましいただいて、現地の病院で自動吸引をしていただいているDrたち、訪看のボスなどと200台祝賀会を開きました。祝賀会の模様をビデオにとって、あとでYOU TUBEにあげようなんて言ってましたが、後で見てみると、単なる酔っ払いのどんちゃん騒ぎ。こりゃ公開できんなあとお蔵入り。その後の22日は、レスピロニクスさん後援の「神経難病の包括的呼吸ケア」ワークショップの演者として東京に出てまいりました。約200名の看護師さん中心の参加者の前で、ずばり、自動吸引はウオシュレットである。そのココロは、「一度使うとやめられない」と発表してまいりました。ワークショップの後は、研究チーム会議、そしてその後は会場のあるビルの上階にあるイタリアンで懇親会。メンバーの看護研究者の方々のほか、S水先生、O野先生や、N島先生、ワークショップ座長のK森先生も後ほど合流され、飲んで食べて喋ってという楽しい懇親会になりました。皆さんパワーありますねえ。
10/21 わたくし、結構自炊派でありまして、勤務も夕方に入ると、患者さんを診る合間に、今晩何作るかなーなどと考えたりしている始末です。いや、もちろん患者さんを診ているときはそんなことは吹っ飛ばして真剣モードなんですよ、念のため。好みを挙げるとやはり麺系で、うどん、パスタあたりは大好きで、よく自分でも作っておりますが、ラーメンは関西出身なものですから、この九州の豚骨味にどうもなじめずあまり食べに行ったりしていないわけです。ああ、醤油ラーメンがなつかしい、尾道ラーメンも食べに行きたいけど遠いしなあなどと嘆いたりするのですが、先日ついになんちゃって醤油ラーメンを開発してしまいました。少し薄めのコンソメスープに麺つゆを適量加えるのです。いやまったく醤油ラーメンそのものの味になってしまいます。天下の醤油ラーメンの名店だって実はこうして作っているんじゃないのかと思いたくなってしまうほどです。それにマルタイの棒ラーメン入れると完成です。星みっつ、です。
8/25 昨日、徳永社長から、アモレ200台達成の連絡が入りました。おめでとうございます。それは、200人の笑顔が達成したことでもある(と信じたい)のです。自動吸引、これからも頑張って拡げていきますよ。
8/13 夏らしく暑くなったこの一週間でした。昨日は佐伯での往診のあとで、本匠という県南の山深い小部落に立ち寄ってきました。透明で冷たそうな水が流れる谷川のほとり、そこが目的地でした。お墓です。もうすでにご家族の初盆参りがあったのか、新しい花が飾られていました。持ってきた何本かのお花を追加してしばし合掌。
お墓の主は、何年もよく寄らせていただいた佐伯のスナックのママさん。私より一つ年上でした。少しハスキーな声で、素敵な笑顔。いつもきりっとされていて、一人で来た客には話相手を。私たちは何人かで寄るから、勝手にカラオケさせてもらっていつも一人3000円。以前、ママから、山本センセ、いい話だったね。あたし感激したヨ、と言っていただいたことがあります。その少し前、佐伯市の社協の講演会で、大分市での難病医療についてお話させていただいたのです。そのときは気がつかなかったのですが、聞きに来てくれていたようです。2年前、病気のため店を閉じるとスナックのドアに紙が張られているのに気づき、気になっていたのですが、先日今年の初めに亡くなられたという話が伝わってきました。初盆のこの夏、お墓を同僚に探してもらい、初めてお参りさせていただいたのです。お墓からの帰り道を歩いていると、ご実家の方が気がつかれたようで、丁寧なご挨拶をいただきました。山から下りて、車から出たとたん、猛烈な熱気を感じ、山中のお墓のあたりの冷気に気づかされました。
8/10 私の愛、私のそばに」をDVDで見ました。韓国のALS患者を描いたものです。あまり事前の知識がなく、男優が激しいダイエットで20kg減をして演技したとかくらいしか知らなかったので、始まりはなんだB級闘病ドラマかなと(じゃ、韓流のA級闘病ドラマは何だと言われたら、あの「消しゴム」でしょうね。ウソンとイェジンの葛藤が素晴らしかった)思って見ていましたが、ぐぐぐっと引き込まれました。主人公が進行する病のなかで精神的に破綻していく様子は鬼気迫るものがあり、20キロのダイエットも凄い効果をもたらしていたのがわかります。ちょっと違和感が残るのは、ヒロインがバツ2だというのに、あまりに可愛く、健気なところでしょうか。お金使ってないなーという感じではありますが、迫力勝ちのような映画でした。でも、思うことがあります。確かにALSという難病に不幸にして罹った一つのカップルの苦悩と純愛を見事に描きだしているのですが、これは決して特殊な状況ではないということです。私がお付き合いをさせていただいているALSの患者さん、そのご家族に、さまざまな「私の愛、私のそばに」があると強く感じます。主人公はなぜか呼吸器をつけたとたんに亡くなってしまいましたが、その後の永い生と生活があることも理解してもらいたいと思います。
8/4

自動吸引一周年です!

自動吸引システムを全国でお使いいただけるように環境を整備して1年がたちました。このシステムを世に出すにあたって、最も注意したことは、事故が起こらなければよいが、ということでした。幸い、現時点までにそのような報告は入っておりません。もちろん、私たちの推奨する方法をとっていただければ事故は起こりえない、との確信のもとにこのシステムを世に送り出しています。しかし、現実というのは、思いもしない使用者の錯誤によって思いもしなかった事故が起こりえるというのも常識です。まず、一年無事故で過ごすことがこのシステムが定着するための第一歩だと考え、無理な販売は避け、慎重の上にも慎重に操作していただけるようアドバイスをしてきました。ただ、その弊害として、説明がわかりにくい、ということもあったのではないかと思います。そこで、動画による説明ページというものを作りました。You Tubeは、すでに多くの皆様にブログのパーツとして利用されています。なにせ動画というのは、画像とは比べ物にならないくらいのファイル容量がありますから、自分のレンタルサーバーに乗せるというのはまず無理です。しかし、動画は文書と違い、圧倒的な説明力があります。これを利用しない手はありません。勉強してみると、ブログだけではなく、自分のホームページにも貼り付けできることがわかりました。さて、動画ですが、実際の患者さんに取り付けて自動吸引させているところは多くの手持ちがありますが、全世界公開ということになるとプライバシーの点でそれらを掲示するのは困難です。まず、私が登場して、ダブルサクションの説明をするビデオなら問題なかろうと試験的に上げてみました。今後、徐々に実際の場面など、工夫して分かりやすくお示しできるよう頑張ってみます。
自動吸引も二年目です。今後も皆様のアドバイスや経験をもとに、さらによいシステムに改良していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
6/24 人工呼吸器の不具合報告を出そうとして厚労省の関係のページから電子申請というのをやろうとしてみました。結果、不可解なエラー、エラーのオンパレードで全くもって先に進めませんでした。この手の申請に強いうちの事務長にさせてみましたがギブアップ。行政の電子申請化を数億使ってやろうとしたものの利用者ゼロなどという結果が事業仕分けのときにありましたが、そもそも申請自体が恐ろしく難しいスタイルになっているのが、利用できない原因なのだと強く感じました。2,3回トライしてエラーではねつけられたら忙しい身であれば、もうあきらめますよ。厚労省は本当は申請してほしくないと考えてわざと難解な申請スタイルにしているのではないでしょうか。本当に情報が欲しいのであれば、申請自体はごく簡単なメールの送信ですます程度の工夫が絶対に必要です。では申請はあきらめたかとうと、従来のFAXで入れましたけどね。
6/18 先日気切して間もない患者が術部から出血しました。そのとき改めて思ったことは、カフの垂れ込みは即座に起こるんだなということでした。痰のように上からか下からから判然としないものではあまりそのことを実感できませんが、今回は血液ですから真っ赤。傷口はカフより上にあります。それが引いても引いてもすぐに気管内に血液が降りてくるのです。今回、出所がはっきりしていますからこのシーンは分かっていても衝撃的でした。出血は止血用綿花の押し込みで止まり、患者さんは無事でした。カフはエアももれないようにすることは可能ですが、液体は簡単に通してしまう。だから自動吸引がめちゃくちゃ有効になるのですが。
6/16 横浜で開かれた日本呼吸療法医学会に参加してきました。自動吸引の演題も2本出ていて、お聞きしたかったのと、やはり現在のテーマを知っておくには臨床の学会に参加するのが一番ですから。それと、米国の人工呼吸器メーカーの社長さんから、自動吸引について聞きたいという話もあり、彼が学会に来るというので、病棟の患者に不安もありましたが、出かける決意をしました。これまで神経難病関係を中心に自動吸引について発表してきましたので、呼吸器では全く知られておりません。もともとはこちらから出発したわけですから、こちらにもきちんと話をしないといけないなと思いました。米国の話は、あちらも在宅医療が進んできているが、やはり夜間の介護負担の問題があり、興味があるということでした。なぜ専用のポンプを作ったのか、などを中心に聞かれました。徳永アメリカが出来るかもしれません。
さて、また高齢者の暴走事故が起こってしまいました。先日のコラムに書かせていただきましたが、アクセルをインターフェイスとして設定する、という必要をますます感じます。この種の事故は今後とも不可避です。高齢者の運転ミスですませてはいけません。唐突な急アクセルは、ブレーキのサインだと車が認識する、というプログラムにすべきです。
自動吸引は、これはいいという評価が次々に集まってきています。院内でももはや完全に定着しています。夜間の痰の吸引でお困りの方は、是非試してみてください。
4/15 11日に東機貿の皆さんと、Newport Medicalのアジア太平洋営業部長のDuane氏の来訪を受けました。新たな在宅用人工呼吸器であるHT70の紹介に来られたのです。
実はこの会社とは、HT50で散々やりあったことがあります。2年くらい前だったでしょうか、あまりにも換気量の変動が大きすぎる、呼気弁のオートピープがかかる、あるいは位置により吸気漏れが発生するなど、かなり重大なクレームを伝えていました。実際、あの当時、換気量を500mlに設定したとき450〜550に変動し、気道内圧も18〜25hPaの変動を起こすような状態で、これは従量式換気とは言えないと強く抗議したものでした。そのときMr.Duaneは、それは変動の範囲であってFDPの基準である±10%を満たしていると主張したのですが、私はそれをクオリティが低いと言うのだと反論しました。さて、今回の後継機種たるHT70はどうだったか。結論から言うと、前回私たちが指摘した点は改善されていました。換気量はきちんと毎回変化がなく、それはちょっとした感動でした。Duane氏によれば、以前は呼気弁や生体側の情報をフィードバックしていたが、今回それは止めて、呼吸器のみで管理している、それで一定になったのだ、という説明でした。来週デモ器を借りてしばらく検証してみるつもりです。換気量は改善されました。残るは呼気弁ですね。
4/1 午前中、大分県の西部にある日田に、この冬から人工呼吸になった患者さんを帰しに行ってきました。1時間半の車中、自動吸引装置をつけておいたのですが、こいつが頑張ってくれて、全く用手吸引をすることなく到着することができました。付き添ってくれたボランティアの看護師が、時々気道内圧が少し上がるんだけど、そうするとズズズと音がして痰が吸引されてるねと言っていました。大分道から見る九重山系はまさに春爛漫たる景色で、日田に着くと、桃が満開、桜も咲き始め。普段と変わらない春、普段どおりの穏やかな山並みです。三陸での惨状、福島での危機を思うと、申し訳ない気持ちになってしまいます。さて、あらためて思います。なぜ、三陸ばかり津波にやられるのか。確かに今回は三陸沖での巨大地震でしたからある意味当然の襲来だったかもしれません。しかし遠く彼方のチリの地震による津波も、この地のみが被災地になるのはなぜか。リアス式海岸だから波が増幅されるのだという説明もありますが、ここ大分県南も向かいの愛媛南予もリアス式海岸ということでは同じです。おそらくはリアス式海岸の鋸の目がどこを向いているかで決まるのでしょう。大分や愛媛は大洋に対し直角であることに対し、三陸は大洋に向って鋸の目が立っています。大分では津波が岬で止められるのに対し、三陸では中に増幅して入ってしまう、こういう現象が起こっているのでしょう。だから今後もあの地は津波に洗われる可能性は高いのです。危険な地は放棄すべきではないでしょうか。あそこに住み続けるのであればもっと山側に宅地を作るべきだと思います。
3/13 11日午前中の診療が終わり、県南の佐伯に移動して現地の往診を終わってクリニックに入ったらなんか待合室の様子が変でした。みなさんがテレビの周りに集まっているのです。震度7という数字が見えました。ただ直下型ではないせいか、まわりのビルが倒壊しているようには見えず、たいしたことはないのかと思いましたが、マグニチュード7.9(これは後に8.8に変更されました*その後さらに改定されて最終的には9.0となっています)、震源10kmという報道を聞いて、これはスマトラ沖と同じ事が起こるぞと戦慄しました。その後のテレビの画像は、すさまじい勢いの海水が駐車場の車を一掃する画面となり、逃げる時間的余裕はあったのかと動悸を覚えました。建物の倒壊なら生き延びる空間があるかもしれない。しかし水が流れ込むというのはそういうチャンスを全て喪失させてしまうことになります。その後の悲惨な情報の数々は、これが本当に現実に起こっているのかというような感覚をもたらしています。プレート境界での巨大地震の場合、広範囲に海底が持ち上がるため、海面の広い範囲が大きく持ち上がり、それが陸地に伝播してくるのです。従って波などではなく、海が移動するような巨大な津波になるわけです。
しかし、こういう状況でも、持ち場で頑張っている多くの医療者、介護者がいるに違いありません。電気の代りに人力で難病患者をささえている方々が必死で頑張っているはずです。仙台といえば東の仙台、西の大分といわれる難病先進地域なのです。知己の方々も大勢います。川島先生、青木先生、今井先生、頑張ってください。ただ先生方が倒れたりしないようそれも気をつけて!
3/8 ひな祭り寒波というのがありました。当日私は夕方の外来診療が終わってから病院を飛び出し、空港に向かったのですが、別府あたりで吹雪にあってしまいました。外気温も1度。真冬でも滅多に見ない光景でしたが、東京行き最終便へのぎりぎりの時間でしたので、かなりあせりました。こちらの高速は雪が1cmでも積もったら、即通行止めだからです。なんせ九州は雪になれてませんから。幸い、別府を過ぎたら雪も止み、無事空港に間に合い、20時のSNA便に乗れました。東京では厚生労働省の関係者の皆さんに、自動吸引開発プロジェクト完了の報告をしてまいりました。完了といっても、すでに改良プロジェクトは立ち上がっているのですが。
3/1 昨年末に気切したALSの女性患者さん二人(人工呼吸管理)が自動吸引をデモ使用中です。二人とも3月に在宅移行を計画中です。とくに一人は吸引回数が多く、夫の介護が可能かどうか不安視されていたのですが、二人とも自動吸引の効果は絶大で、特に吸引回数が多かった患者さんでは、深夜帯の平均吸引回数が7回から1回に減りました。どちらも40〜50gの痰が毎日コンスタントに引けています。在宅介護の世界を変える、と宮崎県難病協議会の塩屋先生に言っていただいたことがまさに現実になりつつあります。
2/14 昨日の日曜に、地元で最も読まれている地方紙、大分合同新聞の一面に私たちが顔写真入りで掲載されました。ネットではこちらでご覧になれます。先日読売の賞(第39回医療功労賞)をいただいたときは、あまり反応を感じなかったのですが、さすが地元紙、今朝から来られる外来の常連患者さん皆さんから、載ってましたねが挨拶がわり。大分合同新聞のパワーを感じます。全国紙のようなおまけはないけども、地元のイベントを知りたければこれしかない、という新聞でもあります。そういえば、私も5年前こちらの新聞の福祉賞というのをいただいていました。あのときもまもなく市販などと言っていましたが、忘れずにいてくれてありがとうございます。
2/3 インフルエンザがそこそこ流行っています。まだまだ小流行程度のレベルです。よくある話として、昨晩急に39度の熱が出て、救急病院受診したが、テスト陰性だったので風邪薬だけもらった、しかし熱が下がらないと翌日受診されるというケースです。聞けば4日前子供がインフルエンザと診断されていたと。こういうケースについて、やはりテスト陽性が出ないと抗ウイルス剤出せない、と考えてしまうDrが多いようですね。私は去年の新型騒動のときに、インフルエンザを証明することが大事なのではなく、インフルエンザを治療することが大事なのだと当直医への申し渡しに明記していました。上のケースなどは疫学的条件から十分インフルエンザとして治療してよいケースだと考えます。もしどうしてもテストの証明がほしければ、翌日あらためてテスト受けてもらえばよいわけです。今年からは一回(正確には4吸入その場でしてもらいますが)吸入するだけでよいイナビルという抗インフルエンザ薬出てますが、少し効きが劣るんじゃないかという印象持つのは私だけでしょうか。タミフルはよく効いているように感じるのですが。
1/28 読売新聞主催の第39回医療功労賞というのをいただくことになりました。読売の地方版に載せていただきました。ありがとうございます。医療というものが、最先端のもののみではない、ということを知っていただくためにもこれはちょっと嬉しいかな。外来で、出てましたね〜、とお祝いを言ってくださるおばあちゃんたちがわが息子のことのように喜んでくださるのが感激です。本日、授賞式。今週は県知事へのプレゼンテーションもあり、患者さんと職員に迷惑かけてます。25日には、東北大神経内科講師の青木正志先生の講演が大分市でありました。「ALSの臨床・研究における最新の話題」という講演でしたが、そのなかで私たちの自動吸引開発を、平成のプロジェクトXと持ち上げてくださいました。そうです、私たちがこの開発を始めたころの合言葉が、目指せプロジェクトXだったんですよ。残念なことにその番組もなくなり、目標が消えてしまったのですけどね。青木先生は、2月から教授就任だそうです。ますますALS研究も進むと思います。今から5,6年前でしたか、仙台で学会があったとき、当時の東北大糸山教授に招かれて、青木先生と仙台往診クリニックの川嶋先生を紹介されました。若手のホープと在野の猛者の姿が好対照でした。あの晩遅くまで川嶋先生と仙台の街を飲み歩いたのが懐かしく思い出されます。
1/25 医療ガバナンス学会というホームページがあります。気鋭の研究者たちの社会的発言の場となっています。このところの話題は、私も昨年少し触れましたが、ずっと対朝日新聞戦でした。東大医科研でのがんワクチン臨床試験における消化管出血について、朝日が一面で取り上げ、臨床試験を非難した問題です。大御所から若手の論客までここぞとばかりに反論し、それはそれでなかなか興味をそそるのですが、どこか刃に走りすぎて、全体像がよく見えないようなもどかしさがありました。しかし最近掲載された湯地晃一郎氏の論評は、そのあたりがきれいに見渡せる、とても優れたものになっています。特に、なぜわが国では臨床試験が治験以外に必要だったのかという点がリアルに見えるようになります。朝日は、臨床試験はでたらめしているから、規制の強い(ついでにいうと莫大な資金と労力が必要な)治験に一本化せよ、という主張でした。そうなるとどういう問題が現場では生じるのか。そのあたりがよくわかります。朝日新聞側も、一本とったつもりだったのが、意外にも集中攻撃されていると固く武装している状態では見えるものも見えないですよ。反論する研究者に撤回要求を配達証明で送りつけるというような恐喝的態度(この態度は、他の社なら取りますかね。言論の自由を言う資格があるのかと驚きますが)を取るのではなく、もういちど全体像を見直してみてはどうですかね。おそらく今回の件で、多くの医系の何十年来の購読者であった方々を去らしてしまったのですから、本来は深刻な内省が必要ではないかと思いますがいかがでしょうか。
1/13 難病地域医療班いわゆる糸山班の研究班会議に復帰し、東京に行って発表してきました。ここずっとこの班のプロジェクトチームとして自動吸引の研究開発をさせていただいたのですが、実は一昨年に我儘を言って離脱させていただきました。ちょうどそのころ私たちは自動吸引用気管カニューレの市販のための最終モデルへの変更を計画しており、絶対にこれまでとの比較試験がいると考えていたのです。しかしその当時に出た厚労省の通達が私たちを絶望させました。未承認医療器具を用いた研究は、国の研究費では今後は出来ないことを明瞭に指示してきたからです。既存の承認された器具を用いた新たな研究って何だ?と疑問を持ちましたが、この状態で試験を強行したら、班長や他の班員に迷惑をかけることになると考え、研究班を離脱し、独力でやり遂げることにしました。そして市販のために開発した内方単独吸引孔の能力が、それまでの下方内方吸引孔と同等かそれ以上であることが確認され、安心してカニューレの市販に踏み切れた、というわけです。既に市販後半年が経過し、多くの声が届いてきました。素晴らしい、という絶賛の声があるなかで、痰が詰まりやすいという問題も少数ですが上がってきています。思いがけなかったのは、低定量持続吸引を、自発呼吸と勘違いして呼吸補助の動作をするある特定の人工呼吸器があったことです。これらは市販後始めて確認されました。そういった内容を研究班日程最後に発表してきたのです。詳しいことはいずれコラムの方に書こうと思いますが、思いがけず嬉しかったのは、発表に際し、会場から大きな拍手をいただいたことです。いや、発表だけでなく、私が途中で薬事承認に頑張ってくれた高研の奥山前部長、徳永装器社長の徳永さんを紹介して立ってもらったら、それこそ会場から大きな拍手が湧き上がりました。私も胸に熱いものがこみ上げました。

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