山本の主張

Dr Makoty's advocate 2023

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2023年1月1日 新年ご挨拶

小生は、大分協和病院の院長とともに、運営母体である大分県勤労者医療生活協同組合の理事長も兼任しております。医療生協理事長としての新年ご挨拶を、生協の機関紙に掲載しましたので、ここに再掲いたします。

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2023年を迎えました。新たな年を迎えることができた皆様おめでとうございます。私たちは当たり前のように新年を迎えることができましたが、遠くウクライナはまるで先の大戦のような惨禍のなかにあります。大戦後に培われたはずの平和がかくも虚しいものであったのかと愕然とせざるを得ません。思えば私は幼少期に、親戚の叔母から、医者になったらいかん。日本は15年ごとに戦争をするから、医者になったら戦争に連れて行かれて死ぬことになる、と言われたことが耳に残っています。叔母の夫は、医師で軍医に駆り出され、ニューギニアで帰らぬ人となったことを後年知りました。叔母の姉も同じく夫を軍医にとられ、フィリピンで亡くなっています。伊賀の田舎の医者一家だった我が家は、それが戦争の結果でした。父だけがまだ医学生で戦地に行きませんでした。幸い我が国は、戦後これまで70年余、戦争をせずにこれました。日本中の戦争被害にあった庶民の恨みが、この平和を作り上げたのだと思います。ウクライナでは突然の大国の侵略にさらされ、逃げようのない不幸におかれている今、一種のヒステリーのように敵基地攻撃能力などという議論が起こっています。一つのボタンの掛け間違いが、全面戦争に陥る危険な罠ではないでしょうか。能力を持つことの怖さは、それを使う誘惑にかられることです。危機的な事態になると、勇ましいことを大声で喋る「愛国者」が必ず湧いてくるでしょう。粘り強く非戦を貫き、挑発をしない強い意志こそが実は必要であるにも関わらず。一見勇ましそうなことを語る者は、真の危機になれば、亡命政府とか言って必ず逃げ出します。一人ひとりの健康と生活を大事にし、日々の仕事を粘り強く続けていく大事さと尊さを胸に刻み、2023年を生きていきたいと思います。医療生協は前を向いて頑張ります。皆さんと診察室や在宅でお会いすることを楽しみに。