ニューポートベンチレータHT50の
呼気弁トラブルについて


HT50(東機貿のサイトより)

小型で大変軽く、しかもバッテリー能力が非常に高いことから、在宅用ベンチレータで使われることが多くなったHT50ですが、呼気弁に弱点があります。以前は組み込み型であり、分解できないことからトラブルはほとんど発生していませんでした。しかし、最近では、呼気弁を分解消毒するように変更され、その組み付け方によって以下のトラブルが生じることがあります。注意してください。

生じうるトラブル

1.PEEPがかかってしまう
   このトラブルが分解型の呼気弁になって頻発しています。呼気相になっても気道内圧がスッと下がらず、緩やかに下がり、2から3cmのところで止まってしまう現象です。この状態で換気しますと、吸気時最高気道内圧がその分だけ上昇することになります。呼気弁によってこれが出たり出なかったりしますので、高い状態でローアラームを設定しますと、PEEPがかからない呼気弁を用いた場合、ローアラームが頻発するという事態が生じます。呼気弁のシリコン板とプラスティックの押さえ板との間によれがあったりして隙間があり弁を押さえつける力があると生じる現象のようです。致命的ではありませんが、頻発しています。

2.呼気弁からエアリークが発生する
   致命的トラブルです。呼気弁に耳をあてると、シューとかピーとかいうリーク音が出ています。絶対に使用してはいけません。呼気弁が台に密着せず、ゆがみがあるときに生じます。

3.呼気が抜けない
   致命的トラブルです。患者に用いた場合、呼気相になっても気道内圧の針が下がらず、High Base Pressureアラームが発生します。呼気弁のシリコン板を逆に装着したときに生じる現象です。円錐形状を筒内に入れるべきところを、逆側すなわち円筒形状を入れたときに発生するトラブルです。分解消毒のあと手作業で組み立てるとき、どちらでも入ってしまうので、稀に生じることがあります。ヒューマンエラーが原因ですが、そのようなエラーを生じうる構造があることが問題といえます。

 

HT50の呼気弁の全体像です。以前は一体型でしたが、最近は分解消毒型に変更されました。
HT50の呼気弁の分解像です。右から呼気弁固定蓋、呼気弁押さえプレート、呼気弁(シリコン製板状)、呼気弁ケースです。
シリコン製の呼気弁の円錐突起。これを呼気弁ケースの孔に挿入し固定します。逆方向でも挿入できてしまうので注意がいります↓
呼気弁の逆側は円筒形になっています。こちらを呼気弁ケースに挿入すると、呼気が抜けなくなるトラブルが発生します。
呼気弁プレートに呼気弁を載せたもの。載せただけでは写真のように不均等にのり、エアリークの原因になります。指でプレートと呼気弁を圧着させるよう押さえ込む必要があります。

 

対策

1.呼気弁の組み立てを慎重に

   現在供給されているHT50の呼気弁は、ガス滅菌を分解して行うよう推奨されています。滅菌後の組み立ての際に、ヒューマンエラーが介在したり、構造上の問題から安定して設置できないということが生じます。ヒューマンエラーの観点からは、そのようなことが起こらない構造にすべきであると言えますが、現状では組み立てる際に注意をするとしか対応できません。いくつかの方法が考えられています。一つは、シリコンの呼気弁をプレートに密着させるよう、よく指で全周を押さえるようにし、次に、呼気弁を下にして、上から呼気弁ケースをかぶせるように装着し、蓋で押さえるようにするのが有効だという方もいます。しかしこのように注意して組み立てても、PEEPがかかってしまうというトラブルは発生することがあります。回路交換時に、そのような問題が生じていないかよく注意してください。

2.他社製の呼気弁を使用する(推奨はできません)

    当院では、度重なるトラブルのため、一体型の呼気弁を除いて、他社製の呼気弁を使うようにしました。具体的にはLP6plus用の呼気弁を使うことにしました。ただし、気道内圧測定用チューブ(青色チューブ)の太い方に対応している呼気弁です。呼気の排気音がやや大きいという点以外は、HT50の呼気弁で生じるような問題は一切生じません。しかし、呼気弁へのチューブの差込が甘くなり、自然に抜けることがあるので(LP6をお使いの方にはよく知られた問題点です)、これに交換した場合は充分注意するよう促す必要があります。ただし本方法は、メーカーやディーラーの承認が得られる方法ではありません。もし使用される場合は、あくまで自己責任でお使いください。本ページ製作者は、一切の責任を負いません。

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