高研ネオブレス・ダブルサクション

注射器吸引マニュアル

 

高研ネオブレスダブルサクションによる
大型ディスポシリンジを用いた
たんの手動吸引法

大分協和病院 院長 山本真

 

私たちと、轄l、の共同開発で実現した、カニューレ内吸引孔を設置した新たな気管カニューレである、高研ネオブレス・ダブルサクションは、患者の人工呼吸を止めることなく、誰でも簡単、安全にたんの吸引が可能です。ここではダブルサクションの仕組みと、大型注射器を用いた手動吸引の方法について説明します。

ダブルサクションの他のカニューレとの最大の違いは、カニューレ内吸引孔が設置されていることです。このカニューレ内吸引ラインに大型注射器を接続して、カニューレ内に入り込んだたんを安全、簡単、衛生的に吸引除去することができます。

手動吸引のコツは、@異音や気道内圧上昇などのたんが上がっているときに行う。Aシリンジのピストンに強い陰圧を感じたら、ゆっくりとピストンを引いてたんを吸引する。Bピストンの圧が抜けたらそのまま10〜20秒シリンジを動かさずに待機し、C再び陰圧を感じたら、再度ゆっくり引く。これを2,3回繰り返す。D最後に残りの引き代で一気に吸引する,というものです。異音や、気道内圧の上昇もなくなったら手動吸引は完了です。そして、シリンジに吸い込んだたんは、ティッシュに押し出して廃棄してください。人工呼吸器を使っている場合は、吸引後、吸引ラインのオレンジの蓋を閉めるか、青いチユーブクランプでラインをはさみ込んでで吸引ラインを閉めることを忘れないようにしてください。これができていないと、気道にリークが生じることになり危険です。この吸引法のみでは不十分と思われたときは、すみやかに通常のカテーテル吸引を実施してください。

吸引カテーテルを気管内に直接入れる方法と違って、この手動吸引法では気管内を刺激しないため、患者に苦痛を感じさせることはありませんし、出血などのリスクとも無縁です。また、人工呼吸器はつけたまま(すなわち人工呼吸を中断することなく)たんの吸引が可能です。カニューレに吸引ラインが設置されていますので、閉鎖式吸引デバイス(*1)のような吸引のための新たな出費は必要ありません。ダブルサクションカニューレの各部の詳細は、ダブルサクションマニュアルをご覧ください。

*1 閉鎖式吸引デバイス
トラックケアステリキャスエコキャスなどの製品がある。カニューレマウントに接続して、吸引回路を外さずに気管内を吸引できる器具。

2010年8月2日掲載
2010年8月13日一部改訂 (ダブルサクション公式ページへのリンク,吸引手順Dを追加,気道リークへの注意喚起を追加)

このたび新発売となった高研ネオブレスダブルサクションのパッケージ。写真の11mmと書いてあるサイズは外径表示です。他のカニューレの多くは内径表示なのでご注意ください。カニューレを変更する場合は、外径が同じになるように選択してください。保険医療取扱いです。1mmごとに8〜13mmのサイズがあります。高研の営業担当者とご相談ください。
中身がこれ。
オレンジの端末のラインが、カニューレ内吸引ラインです。透明の端末は、外付けのカフ上部吸引ラインです。カニューレ内吸引ラインには、蓋だけでなく、チューブクランプもつけています。
ダブルサクションのカニューレ内吸引ラインに大型ディスポシリンジを接続します。
ダブルサクションの模式図です。
カニューレ内に入り込んだたんを注射器で吸いだします。吸引孔が気管粘膜とは接しないため、患者さんに刺激を与えません。出血のリスクもありません。人工呼吸の場合も換気の中断はありません。
神経難病や、脳血管障害で気切された患者のたんの多くは、唾液などの気管内への垂れ込みです。カフを越して気管内に入り込んだたんは、呼気に押されてカニューレ内に入り込んであばれます。これが異音の原因です。カニューレ内に入り込んだたんを吸引できるのが、高研ネオブレス・ダブルサクションなのです。
筆者がダブルサクションからたんの注射器吸引をしいるところです。カニューレから異音がするときに、注射器吸引を行うと有効です。
カニューレ内方吸引ラインに大型のディスポシリンジ(100mlクラス)をつけて陰圧を感じるときにゆっくりと引きます。圧が抜けたらしばらく待機。これを2,3回繰り返すとたんの吸引が終了します。
シリンジに吸引したたんは、ティッシュに押し出して廃棄します。たんの吸引はこのように簡単になります。
もし注射器によるたんの吸引が不十分と思ったときは、すみやかに通常の吸引を行ってください。
人工呼吸を行っている患者の場合は、吸引後、カニューレ内吸引ラインの蓋を閉めるか、チューブクランプ(矢印)でラインを閉鎖するのを忘れないでください。
このラインを閉鎖しないと換気のリークが生じます。

 

 

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